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2013.08.11 Sun
心の芽吹き
仕事中、携帯にメールが入った。
所属する道場に通う子どものお父さんからだ。

「これから決勝戦です! 先生の分までしっかり応援します!」

一瞬、目を疑った。
地元で行われている剣道の試合の小学生団体戦。3位入賞すら一度もなかった子どもたちが決勝の舞台に立っているというのだ。

ことばにならない感情が込み上げてきた。
ぼんやりとにじんだパソコン画面を眺めながら、キーボードをたたく手が止まる。

娘を入部させたのは5年前。年中のときだ。部員不足で同学年はおろか、年の近い子どもはいなかった。
来る日も来る日もすり足の練習をした。
練習が嫌で、目を離した隙に体育館から逃げ出したこともあった。妻は雨の中、まだ小さい下の子を抱きかかえたまま捜し回った。

「団体戦で勝てるチームを」と心に誓った。

周囲の人たちの協力もあって、少しずつ入部者が増えていった。

昨年9月、団体戦で初勝利した(当ブログにも掲載)。
けれども、それ以降はなかなか勝てない試合が続いた。

「内容は悪くない。確実に進歩している」
自分に言い聞かせた。

ことしの春から夏にかけて、出稽古や勉強会、屋外トレーニング、暑中稽古などをこなしていった。
仕事でなかなか顔が出せないが、出来る限り時間を作った。

そして迎えた今日の試合だった。

しばらくして、先のお父さんから再びメールが入る。
「大接戦の末、負けてしまいました」

大将勝負にまでもつれ、1本ずつ取り合ったのちにメンを取られたのだという。

結果は残念ではあったが、負けでも悪い気はしなかった。
最近の子どもたちの剣道に対する前向きな姿勢が、確実に実を結び始めている。その手応えだけで十分だった。

仕事は遅くまで続いた。
夜、もう一通メールが届いた。試合を見に行っていた私の母からだった。

「感動をありがとう。あんなにみんなが団結した試合、初めてみたよ。ご苦労さん」とあった。
指導者や保護者、OB、先輩たち、色んな人の熱い思いが詰まった試合だったに違いない。

後から知ったことだが決勝戦の途中、泣きだしてしまう母親もいたらしい。
勝ち負けだけではない。子どもたちの成長した姿が、ひたむきな姿勢がそうさせたのだろう。

芽吹き始めた、逃げない気持ち。

心の芽は伸びて、やがて花を咲かせるだろう。
早く咲かなくてもいい。きれいでなくてもいい。
雨を喜ぶ素直さを、風に負けないたくましさを、雪を受け入れるおおらかさをもった花であってほしい。

131.jpg
写真=大雨に見舞われた暑中稽古1日目(今月2日)。体育館から見た校庭は水浸しになっていた。
泣きながらかかり稽古をした者、途中で倒れてしまった者、腕が上がらなくなるまで竹刀を振った者。
校舎はただ、そっと子どもたちを見守っているようだった。

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