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Author:むーらん
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2012.12.17 Mon
忘れものをとりに

先週土曜日に締切仕事が終わり、普段ならホッとひと息といきたいところだが、編集を終えたその足で夜行バスに乗り込む。
向かったのは神戸。ほぼ10年ぶりの訪問だ。忘れかけた何かを思い出したかった。

朝5時くらいに着く。当然、辺りはまだ真っ暗だけれど元町から三宮エリアを散策。
明るさは関係ない。学生時代と社会人時代、慣れ親しんだこの街の空気を、もう一度吸いたかった。

smy01.jpg

7時30分過ぎに西宮市内にある母校(兼、元職場)を訪問。
正門に近づくにつれ、キャンパス中央にたつ時計台がしだいに大きく見えてくる。

smy02.jpg

校内を歩くと、学生時代には気にならなかったもの、見えなかった風景が目に飛び込んでくる。
時計台のエンブレム。庭園の紅葉。池のそばで羽を休めるカモのつがい。

smy03.jpg

周辺の施設や建物などもけっこう様変わりしていた。
訪れてみたかったのは、学生時代を過ごしたアパート。トイレや風呂は共同だったから、寮と呼ぶ方があっているか。

校門を出て左に曲がり、歩くこと約100m。大家さんはご健在だろうか。もしかしたら建物自体、なくなってるかもしれない。いろんな思いが交錯するなか歩を進める。

「お願い、残っていてくれ!」

目を向けると、あった。当時のたたずまいのままで。胸をなでおろす。

smy04.jpg

ふと、入口脇からジョウロを持ったおばあちゃんが出てきた。
まっ白髪でゆっくりとした歩みだが、確かに見覚えのある顔だ。

大家さんだ!
「お元気ですか? 憶えていますか?」
駆け寄りたかった。でもできなかった。

「ゴメン、分からへんわー」

と言われるのが怖かったのか…。一瞬目が合ったように思ったが、お互い逆の方向へ歩いていく。
10年という、ときの流れが心にしみた。

もう一度キャンパスに戻る。ジョギングをする人とすれ違う。
何気なく時計台を見上げると、いろんな思い出がよみがえってきた。
苦しかったこと。楽しかったこと。出会いと別れ。

冷たい風が、枯れた芝生のにおいを運んでくる。
たくさんのことを学んだ。
改めて、ここは心の原点なんだと実感した。

失いかけていたものを思い出させてくれた気がした。

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